高山病に備えよう

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マチュピチュ旅行と高山病

マチュピチュ旅行において全ての旅行者に気を付けていただきたいのが高山病対策です。
場合によっては重症にもなり得る高山病ですが、その対策方法には効果のない間違っている情報が散見されます。
マチュヨでは高山病対策を調査して、信ぴょう性の高い方法をご紹介します。
このページでは高山病について詳しく説明しますが、時間のない方や結論だけ知りたい方のために先に結論をまとめました。
  • クスコ到着前にしっかり休息をとって体調を万全にしておく
  • ダイアモックス(アセタゾラミド)をクスコ到着時から(できればクスコに到着する直前から)服用しておく
    ※服用の仕方:アセタゾラミド剤一錠は250mgですが、1回1錠(体重が軽い人は半分)を3日間、朝と夕に摂取する
  • コーラ等で糖分と炭酸を摂取する
  • クスコに到着した当日は激しく動いたり、はしゃいだりしない(ゆっくり歩き回るくらいなら大丈夫)
  • 呼吸が浅くなるので、クスコ到着後すぐには睡眠をとらない

高山病とは

まず、高山病とはどういう病気なのかを知りましょう。
高山病とは標高の高い場所において、酸素が不足することによって生じる様々な体の不調を指して用いられる言葉です。
特に登山や旅行などで普段は低地に生活している人が高地に上って発症する場合を急性高山病と呼びます。
通常、高地に到着後数時間で発症します。
体が低酸素に順応できた場合には、高山病は発症しない、もしくは軽度の症状となります。

なぜ酸素が不足するの?

なぜ、標高が高いと酸素が不足するのでしょうか
標高が上がると気圧が下がります。
気圧が低いということは、空気の密度が低いこと意味します。
つまり、同じ体積の空気でも、標高の高い場所の空気は密度が低く、量が少ないということです。
(空気中の酸素の割合が減るわけではなく、空気自体の密度が低い、つまり空気が薄くなるのです。)
ですから、体が酸素の必要量を摂取するためには、低地よりも多くの呼吸量が必要となります。
また、酸素は気体ですが、ごくわずかですが水や血液に溶け込むことができます。
その酸素の溶ける量は気圧が高い程多くなります。
(酸素分圧と呼ばれています)
しかし、高山では気圧が低いため、血液中の酸素分圧も低くなり、血中の酸素の量が低地に比べて少なくなります。
クスコやマチュピチュの標高と近い、海抜3000mで体内の酸素分圧は海抜0mと比べて半分程度にまで下がります。
このような理由で、標高の高い場所では酸素が不足するのです。
しかし、人間には呼吸中枢という大気の変化を感じ取り、呼吸を促すセンサーがあります。
多くの人は呼吸中枢の働きにより、体を高山に順応させることができます。
しかし、この呼吸中枢がうまく働かない場合、もしくは順応できる範囲を超える変化があった場合に高山病が発症するのです。
高山病の症状は1000m台から発症する可能性がありますが、ほとんどは2000m以上の標高から発症します。
クスコの標高はおよそ3400mですが、私個人の観察からすると高山病が重く発症して動けなくなってしまうような人は数パーセントもいない、極少数でした。
全く元気な方、ちょっと違和感を感じる程度の方がほとんどです。

高山病の症状とは

軽度の場合の症状は「山酔い」と呼ばれ、頭痛、吐き気と嘔吐、目まいなどがあります。
また、酸素不足による内臓の機能障害により、下痢や放屁、食欲減退などが起こることもあります。
重度の場合には高地脳浮腫や高地肺水腫となり、運動失調や思考力の低下、息切れなどの症状が現れ、大変危険な状態となります。
この状態になると、すぐに標高の低い場所に移動して治療を行わないといけません。

間違いだらけの対処法

高山病の対処法として様々な方法が知られていますが、その中には効果がないものや根拠のないものが見られます。
マチュピチュ旅行を安心して楽しんでいただくためにも、間違った高山病対策で苦しむことがないよう周知をしたいと思います。
現地の人やマチュピチュ旅行経験者がこれらの高山病対処法を勧めてくれるかもしれませんが、これらは効果がありませんのでご注意ください。
 
sorojchi-pills.JPG買ってはいけないソロチピル

× ソロチピル(Sorojchi Pills) ・・・ 買ってはいけない

ソロチピルは高山病対策を全面的に打ち出して販売されている薬品です。
クスコの空港やたくさんの薬局、ガイドブックなどに日本語で「高山病の対処法」という表記と共に広告を出しています。
しかし、主成分はサリチル酸で、これはただの鎮痛剤の成分です。
高山病の症状の一つである頭痛を抑えることはできますが、高山病の原因である酸素の欠乏を解決する物ではありません。
むしろ、頭痛のような症状は高山病の発症のサインとなるため、鎮痛剤で痛みを抑えながら無理をして旅行を続けるのは大変危険です。
また、ソロチピルには利尿作用のあるカフェインも含まれているため、脱水症状により高山病の症状が悪化する可能性すらあります。
広告に騙されず、ソロチピルを購入することはお避け下さい。

△ コカ茶 ・・・ ちょっとだけ症状が和らぐだけ

クスコの人はみんなコカの葉を煎じて飲む「コカ茶」が高山病に効くと口々に言います。
確かにコカの成分には感覚を麻痺させて、高山病に伴う頭痛や不快感を和らげることができます。
しかし、コカ茶には高山病自体に有効な成分は含まれていません。
軽度の高山病の症状が出ていて、その不快感を和らげたいのであればコカ茶を高山病対策として飲むこともいいと思います。
人によってはコカ茶が体に合わず、少し気持ち悪くなってしまうこともあるかもしれないので注意してください。

△ 酸素缶(Oxishot) ・・・ 吸っている時だけ気分が良くなるがすぐなくなる

クスコの薬局にはOXICUSCOという会社が製造する緑色の酸素缶「Oxishot」が販売されています。
大きいサイズは8リットル、小さいサイズは6リットルの酸素が注入されているということです。
一見、酸素が不足しているのだから、酸素を吸入すればいいというのは正しい方法と思えます。
しかし、高山病を防ぐには酸素の量が少なすぎるというのが実際のところです。
成人男性の場合、一回の呼吸量はおよそ500mlです。
もっとも一呼吸ごとに酸素のみを吸うわけではありませんが、登山家の場合1分に2リットルを消費するのが普通のようです。
ですから、8リットルの缶で酸素を吸入した場合、4分しか酸素がもたないことになります。
実際の登山家はエベレストのような非常に厳しい登山の際には1000リットルにもなる本格的な酸素ボンベを何本も持って登頂に臨むようです。
このような小さい缶の小容量の酸素缶・酸素ボンベは吸った時にちょっとだけ気分がよくなる程度の効果しかなく、中身がなくなった時にリバウンド症状が出る可能性があります。
高山病は体が高山に順応すれば発症することはありませんが、酸素缶は体を低酸素の環境に順応させるものではありません。
高山病が発症してしまった後であれば、酸素を吸う治療を受ける必要がありますが、継続的に吸入する必要があるため、8リットルの酸素缶では量も足りないので不必要な出費を避けるためにも購入するべきではないでしょう。

× 食べる酸素・飲む酸素 ・・・ 買ってはいけない

サプリメント、健康食品のような位置づけの商品で「食べる酸素」や「飲む酸素」「酸素水」といったものが日本国内で販売されています。
中には高山病対策を謳っているいるものもあります。
それぞれの商品を取り上げることはしませんが、どの商品も足りない酸素を補えるものではありません。
前述の酸素缶ですら酸素の量が少なすぎるのに、錠剤や水などに十分な量の酸素を閉じ込めることは物理的に不可能です。
また、「食べる酸素」や「飲む酸素」という製品に含まれていることの多い「ゲルマニウム」という成分の安全性に疑問が残ります。
無機ゲルマニウムは有害だが、有機ゲルマニウムは安全という説が出回っているようですが、有機ゲルマニウムの危険性についての報告も出されています。
この手の健康食品はもっともらしい効果を謳いますが、科学的根拠のないものが多く、まして高山病に効き目はありませんのでご注意ください。
実は私も昔、物は試しと買ってみたこともありますが、少し調べて効果は期待できないことが分かりました。
高山病に効果があったという人もいますが、プラシーボ効果と呼ばれる、いわゆる「気の持ちよう」によるものでしょう。

正しい対処は予防が全て

高山病は発症してから対処するのではなく、予防から取り組むのが一番です。
いったん高山病が発症してしまうと、回復するための方法は標高の低い場所に行く以外にはないからです。
それでまず、なによりもクスコに到着する前に、体調を万全に整えるようにしてください。
飛行機でリマに深夜に到着し、翌朝クスコに飛行機で移動する人が多いと思います。
その場合、リマに到着する国際便の中でしっかり休息をとる、可能ならリマでちゃんとホテルに宿泊するなどして体調を整えてください。
もしできるのであれば、標高を徐々に上げて体を慣らすために標高が2300mと低めのアレキパを最初に訪れるという方法もあります。
また、歩くときはゆっくり動く、水分を沢山とる、アルコール飲料を避ける、内臓への負担を減らすため食べ過ぎないようにするなどの点を心がけましょう。
睡眠中は呼吸が浅くなり、高山病が悪化する可能性があります。
ですから、クスコ到着時はすぐには睡眠をとらないでください。
会話をしていると呼吸が浅くなりにくいので、同行者とおしゃべりをしたり、深呼吸をしたりして数時間は目を覚ましていてください。

アセタゾラミドで高山病を予防しよう

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高山病の予防薬として「アセタゾラミド」という成分の薬品を摂取することをお勧めします。
これは在ペルー日本領事館のHPでも推奨されており、他にも登山系の学会でも効果が認められている薬品です。
アセタゾラミドには血中の二酸化炭素の尿での排泄を抑制することで、体が呼吸を促進し多くの酸素を取り込むようにする作用があることが実証されています。
そのため、アセタゾラミドにより呼吸が促進され、高山の酸素不足に体を前もって備えさせておくことができるのです。
アセタゾラミドの商品名は日本では「ダイアモックス」という名前で知られますが、日本では医師の処方が必要となり、金額も非常に高いのでペルーで購入することをお勧めいたします。
ペルーでは「アセタック」(Acetak)という商品名で販売されています。
ペルーにおいては処方箋は必要ありません。(くれぐれもソロチピルと間違えないでください)
薬局で「アセタソラミダ」(Acetazolamida)と言えば通じます。(スペイン語の発音です)
とはいえ、全ての薬局で取り扱いがあるわけではありません。
リマの薬局よりも、クスコのアルマス広場付近の薬局の方が手に入りやすいでしょう。
リマの空港の売店でも販売していますが、そこではばら売りをせず1シート10錠を相場の4倍程の値段で販売するので大きな出費となり、お勧めできません。
※クスコではペルートラベル現地スタッフが薬を販売しております。($10)
必要な方はお申し付けください
 
服用の方法ですが、1日2回朝と夕方に1錠(250mg)ずつ服用してください。(体重が軽い方は半錠125mgずつ)
タイミングはクスコに到着してすぐにドラッグストアで購入し、すぐに1回目を服用してください。
尿の量が増えるため夜間の使用はお勧めできないので、夕方の服用は遅くならないようにしましょう。
体が高山に順応するまで、だいたい3日ほど服用するといいでしょう。
ですから全部で6錠(体重が軽い方は3錠)を、クスコに到着したら薬局で購入し、すぐに服用してください。
アセタゾラミドの副作用として、指先などの体の末端部分にチリチリとした痺れを感じることがあります。
服用をやめれば収まり、後遺症などもないため、少しの痺れは問題はありません。
また利尿作用があるため、トイレの回数が多くなります。
脱水症状を避けるために水分の補給を十分に行ってください。
また利尿作用により体内のカリウムが減るため、果物や野菜を摂取して補うと良いでしょう。
持病のある方、アレルギーのある方は事前に医師に相談してください。
サルファ剤にアレルギーのある方は服用できません。
また、薬との飲み合わせもありますので、普段常用している薬がある方、特に心肺系の作用の薬を摂取している方は事前に医師とご相談ください。
小児への投与や妊娠中の服用は、安全性が確認されていないため控えた方が良いでしょう。

炭酸水が高山病に効く?

一部、インターネットなどで炭酸水が高山病に効果があるという話が出回っているようです。
科学的根拠についてのコメントはないようですが、全く間違いでもないかもしれないので、少し取り上げたいと思います。
酸素を取り込むのではなく、炭酸で二酸化炭素を取り込むのは逆効果なのではないかと思われますが、高山に体を慣らすために二酸化炭素は有効と言われています。
大気の変化に応じて呼吸を整える呼吸中枢には二酸化炭素のセンサーが備わっています。
呼吸中枢は、血中の二酸化炭素濃度が高くなると、呼吸を促して酸素を取り込み二酸化炭素を排出するよう働きかけることが分かっています。
ですから、二酸化炭素を適度に取り込むことで高山に体を順応させることができます。
しかし、炭酸水に含まれる二酸化炭素はそれほど多くの量ではありませんので、上記の効果を期待するのは難しいかもしれません。
前述のアセタゾラミドに同様の効果があるため、二酸化炭素を別途取り込む必要はないでしょう。
ただ、アセタゾラミド服用時には体が多くの水分を必要としますし、高山では低地よりも多くのカロリーが必要となります。
ですから、コーラのような甘い炭酸飲料は高山病対策としても摂取するといいと思われます。
折角ですから、ペルーの歴史ある炭酸飲料である「インカ・コーラ」を飲んでみるといいのではないでしょうか。